2018.5.13
私がぐっほりを知ったのは去年の6月で、他の好きなバンドのライブのゲストに呼ばれていて、そこで見たのが初めてだった。そこで見たサイエンスティック・ラブに惹かれたのが好きになったきっかけだ。"正真正銘生粋のラブソング"などと言った皮肉めいた歌詞や、どこか怪しげだけれども口ずさみたくなるメロディ。ぐっほりの音楽に惚れるには十分すぎた。そこからアラカレットを提げたワンマンツアーを彼らは行った。近くの県にも来ていたので、スケジュールに無理があったが、どうしても行きたくて行った。
今まで他のライブには何度も行ったことはあったが、どうしても演出者と観客がというものがどこかで線引きされているように思わざるを得なかった。しかし、ぐっほりは違った。彼らのライブはあたたかく、私を優しく包み込むように迎え入れてくれたのだ。会場が本当に一体になるというものを肌身で感じた。
一月の自主企画のバンドワゴンにも、インストアライブにも行った。3人だけのサーキットライブも見に行った。ドッペルゲンガーでは渾身の作品と言っていたように、どの曲もそれぞれの素晴らしさを持っていて、ツアーで聞くのが楽しみだった。今年は忙しいから、来年から本格的に各地のライブに参加したいなと思っていた。
そんななから彼らは解散を発表した。
正直、何かが起こるとは感じていたが、まさかそれが解散だとは思いもしなかった。
発表当初は解散するという実感がなかった。好きになったバンドが解散するなんて今までなかったし、これからもそんなことはないと思っていた。知って一年も経ってない、まだまだこれからと思っているバンドが解散するなんて。何度解散の文字を見ても実感は湧くことはなかった。
ぐっほりのラストライブが行われた。
もとからツアーの広島は参加しようと思っていた。その時はそれが最後になるなんて思いもしなかったが。開場しても、彼らが登場しても解散の実感は湧かなかった。曲はどんどん進み、初めて生で聞く歌や何度も聞いてきた歌が演奏されていった。
パラダイムシフターという彼らの歌がある。彼らがどういう気持ちでその曲を作ったのか知らないままだったが、私はこの歌が大好きだ。
パラダイムシフトという革命を起こす意味の言葉に、人の意味を付け足したパラダイムシフター。
この曲が始まる寸前に、児玉は叫んだ。
「あいつもここに来たかったはず!」
「来たかったはずのあいつに捧げます!」
あいつが誰を指しているかなんて言われなくてもわかる。私の世界で音楽に対する革命を起こしてくれたあいつ。初めて自分好みの歌詞を書く人だった。どのフレーズも好きだった。あいつの描く世界観が好きだった。最後の最後、あいつ抜きでのステージだったけども。
それまでの曲でも涙は溢れていたが、この言葉を聞いて、あのイントロを聞いて、涙を止めることができなかった。
それは児玉も同じだったみたいで、彼自身も歌えずに泣いていた。その代わりに観客が歌い始めた。またライブ会場が一体になるのを感じた。
泣きながら何度も詰まりながらも歌う児玉を見て、胸が苦しくなった。
"嫌いな奴にはいっそもう嫌われている方がいいや"という歌詞があるのだが、そのあとに児玉は「そんなことはないよな?」と続けた。彼はいつも歌いながらそう思っていたのだろうか、と一瞬冷静になった。
そこからは泣きながら必死に歌った。これが最後の革命だ。ベースのアンプの上に置かれたmねこが目に入るたびに涙がこぼれた。
今まで音楽を聞いて自然に泣けたことがなかった。今泣いたら周りの空気と相成って感動するだろうな、と思って泣いてきた。だから初めてだった、涙で滲むメンバーを見て泣きたくないと思った。でも止まらなかった。そのあとのwritting lifeもあいつの書いた歌だ。ボロボロに泣いた。
蛍で児玉の弾き語りにうっとりした後はみんなで溢れるものを歌った。とても楽しかった。ぐっほりは涙の後に笑顔をくれた。最後の曲、ANSERを聞いた時、ぐっほりはまだまだ終わらないんじゃないのかと思った。最後の最後は清々しく終わらせてくれた。涙は出なかった、だって悲しくなんてない。ぐっほり自体の遠征記はこの日で終わったが、彼らの曲はずっと生き続ける。
おまけにMCで、いつかまたライブができたらいい、と言ってくれた。正直後悔しないように生きてはきたので、いつ死んだってどうでもよかったが、この言葉を聞いて生きようと思えた。もし生きていった先にぐっほりが待っているなら、それだけのために頑張りたい。私に音楽のあたたかさを教えてくれた彼らにもう一度会えるなら死ぬわけにはいかない。
パラダイムシフターをつくったまさはるさんにあなたの作る歌が好きです、と伝えたことがあった。彼がどういう返答をしたのか、伝えることに一生懸命だった私は覚えてはいないが、きっと真に受けてはなかった気がする。
私の音楽人生で革命を起こしてくれた彼がこの先の人生で彼自身に胸を張って生きていけますように、他のメンバーがそれぞれの遠征記を楽しめますように、また何処かでお会いできるのを楽しみにしています。ありがとう。